
昔々、ガンジス川沿いに栄えたヴァーラーナシー国に、マハーウパサラ王という王がいました。王は大変裕福で、権力も富も持っていましたが、一つの大きな欠点がありました。それは虚言癖でした。王は、人々を驚かせたり、自分の手柄を大きく見せたりするために、些細なことから重大なことまで、平気で嘘をつきました。
ある日、王は廷臣たちを集め、得意げに語りました。「朕は、この世界で最も賢く、最も勇ましい王である!朕の敵など、この世に存在せぬ!朕は、かつて一人で虎を百頭退治したことがあるのだ!」
廷臣たちは、王の言葉に耳を疑いました。虎を百頭も退治したなど、いくらなんでも無理な話です。しかし、王の威光を恐れて、誰も反論できませんでした。皆、ただ顔を見合わせ、静かにうなずくだけでした。
王は、自分の言葉が信じられないような反応をされると、さらに虚言を重ねていきました。「いや、朕は虎だけでなく、数千の悪鬼を退治し、その角を宮殿の装飾にしたのだ!そして、かの偉大なる帝釈天さえも、朕の武勇を称賛し、自らの宝冠を朕に授けようとしたのだ!」
王の虚言は日増しにエスカレートし、国中に広まっていきました。人々は、王の言葉を鵜呑みにする者もいれば、さすがに信じられないと噂する者もいました。しかし、王の権力は絶大であったため、誰も王に真実を問う勇気はありませんでした。
そんなある日、ヴァーラーナシー国に一人の賢者が訪れました。賢者は、各地を遊歴し、人々の悩みを聞き、智慧を授けることで生計を立てていました。賢者の評判は遠くまで響き渡っており、王もその名を聞いたことがありました。
王は、賢者の訪れを知り、早速謁見を求めました。王は、賢者に対して自分の偉大さを誇示したい一心でした。王は、賢者を前にすると、いつものように虚言を並べ始めました。
「賢者よ、そなたは遠方より来られたとのこと。朕の国は、かの羅刹の国をも凌ぐほど豊かで、人々は皆、朕の慈悲深き統治の下、幸福に暮らしておる。朕は、かつて一晩で千人の盗賊を捕らえ、その首を並べたことがあるのだ!」
賢者は、王の言葉を静かに聞いていましたが、その目には王の虚言を見抜いた光が宿っていました。賢者は、王の虚言の裏にある、王の心の弱さ、そして虚言によって生み出されるであろう悲劇を予感していました。
賢者は、王に丁寧に問いかけました。「王よ、誠に素晴らしいお話でございます。しかし、私には一つ疑問がございます。王は、盗賊を千人も捕らえられたとのことですが、その盗賊たちは、王のご慈悲によって釈放されたのでしょうか?それとも、厳しく罰せられたのでしょうか?」
王は、賢者の問いに少し戸惑いましたが、虚言を続けるしかありませんでした。「ふむ…それは…盗賊たちは、皆、朕の威光に恐れをなして、自ら改心し、二度と悪事を働かないと誓ったのだ。朕は、彼らに寛大な処置をとったのだよ。」
賢者は、さらに問いかけました。「王よ、ではその改心した千人の盗賊たちは、今、どこで何をしておりますか?王のお膝元で、善良な市民として暮らしておられるのでしょうか?」
王は、さらに追い詰められました。盗賊たちの行方など、王は知る由もありません。王は、額に汗を滲ませながら、苦し紛れに答えました。「それは…彼らは皆、王の恩に感謝し、遠い国へと旅立ち、そこで人々に善行を施しておるのだ。」
賢者は、王の顔色を窺いながら、静かに語りました。「王よ、もし仮に、王の仰る通り、千人の盗賊が改心し、遠い国へ旅立ったとしましょう。しかし、もし、その盗賊たちが、王のご慈悲を過信し、再び悪事に手を染めたとしたら、その罪は、王にも降りかかるのではないでしょうか?王は、その千人の盗賊たちの罪をも背負う覚悟がおありなのですか?」
賢者の言葉は、王の心に深く突き刺さりました。王は、これまで自分の虚言が、いかに無責任で、そしていかに多くの人々を欺いてきたかを、初めて自覚しました。王は、王宮という密閉された世界の中で、自分の虚言を現実のように信じ込んでいましたが、賢者の言葉によって、その虚偽の世界は脆くも崩れ去りました。
王は、賢者の前にひざまずきました。「賢者よ、私は愚か者でした。私の言葉は、すべて虚言であり、人々を欺くものでした。私は、自分の力や偉大さを過大に評価し、現実から目を背けていました。どうか、私を許してください。」
賢者は、王の心からの謝罪を受け入れ、優しく語りかけました。「王よ、過ちを認め、改心しようとする心こそが、真の智慧であります。王の財力と権力は、人々を幸福にするためにあるのです。虚言は、人々を不幸にし、王自身の信頼を失わせるだけです。これからは、真実のみを語り、誠実に国を治めてください。」
賢者の言葉に励まされ、マハーウパサラ王は、その日から生まれ変わりました。王は、嘘をつくことをやめ、日々の出来事を正確に臣下に伝え、人々の意見に耳を傾けるようになりました。王は、自分の虚言によって失われた信頼を取り戻すために、懸命に善政を施しました。王は、貧しい人々に施しをし、困っている人々を助け、国を平和に治めました。
やがて、王の真実の言葉と誠実な行いは、国中に広まりました。人々は、王の言葉に信頼を寄せ、王を心から尊敬するようになりました。王宮には、かつてのような空虚な賞賛の声ではなく、人々の感謝と賞賛の声が満ち溢れるようになりました。
マハーウパサラ王は、賢者との出会いを生涯忘れることなく、真実と誠実を胸に、幸福な治世を全うしたのでした。
虚言は、一時的には人を欺くことができるかもしれませんが、長期的には信頼を失わせ、最終的には自分自身を滅ぼします。真実を語り、誠実に行動することが、真の尊敬と幸福を得る道です。
真実の功徳(サッチャ・パーラミー) - 真実の功徳。真実を語り、言葉を守ること。
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虚言は、一時的には人を欺くことができるかもしれませんが、長期的には信頼を失わせ、最終的には自分自身を滅ぼします。真実を語り、誠実に行動することが、真の尊敬と幸福を得る道です。
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