
遥か昔、バラモン教が盛んだった時代、カシ国のバラナシという都に、大変裕福なバラモンが住んでいました。彼の名はアリンダ。アリンダは、財宝を山のように蓄え、その暮らしぶりは、さぞかし羨ましいものだったでしょう。しかし、彼の心には、一つだけ満たされぬ思いがありました。それは、妻のことでした。
アリンダの妻、スジャータは、絶世の美女でした。その美しさは、まるで天上界の女神が地上に降りてきたかのよう。しかし、その美しさとは裏腹に、彼女の心は、恐ろしいほどの強欲に蝕まれていたのです。スジャータは、自分自身のことしか考えず、夫の財産を湯水のように使い、贅沢三昧を繰り返しました。日夜、宝石や絹織物、香料を求め、その消費は留まることを知りませんでした。
アリンダは、妻の強欲ぶりを嘆きつつも、彼女の美しさゆえに、そのわがままを許していました。しかし、ある日、事態は急変します。アリンダは、病に伏せ、次第に衰弱していきました。死期が近いことを悟った彼は、愛する妻のために、最後の願いを口にしました。
「スジャータよ、私の命も、もう長くない。私が死んだら、この財産はすべてお前に残す。どうか、私の遺言を心に留めておくれ。この財産を、ただ自分のためだけに使うのではなく、困っている人々を助けるために使いなさい。そうすれば、私の魂も安らぎを得られるだろう。」
スジャータは、夫の言葉を、ただ冷ややかに聞いていました。彼女の心には、夫の死後、どうやってこの莫大な財産を独り占めにするか、ということしかありませんでした。夫の遺言など、彼女の耳には届いていなかったのです。
「はいはい、分かりましたわ。」
スジャータは、そう言って夫の気を紛らわせるかのように、優しく微笑みかけました。しかし、その瞳の奥には、下卑た計算がギラギラと光っていました。
アリンダは、妻の言葉を信じ、静かに息を引き取りました。彼の死後、スジャータは、まさに阿鼻叫喚の世界に身を投じました。彼女は、夫の遺言など一笑に付し、更なる贅沢を追求し始めたのです。高価な衣類は、一日三度も着替え、毎晩のように豪奢な宴を開きました。美食を求め、世界中から珍しい食材を取り寄せ、それを道端に捨てては、また新しいものを求めました。
「この、古びた宝石なんて、もう目に入りもしないわ!」
スジャータは、山と積まれた宝石を前に、吐き捨てるように言いました。
「もっと、もっと輝くものが欲しいのよ!この世の全てを手に入れても、まだ足りないわ!」
彼女は、日夜、欲望のままに財産を浪費しました。家来たちは、彼女の狂気に呆れ果て、遠巻きに見守るばかり。かつてはアリンダの富を羨んだ人々も、今ではスジャータの愚かさを嘲笑っていました。
ある日、スジャータは、街を歩いていると、一人の老いた乞食に出会いました。その老人は、痩せ細り、着る物もボロボロで、見るも痛ましい姿でした。
「奥様、どうか、ほんの一 sliver の施しを…。」
老人は、震える声でスジャータに懇願しました。しかし、スジャータは、眉をひそめ、嫌悪感に顔を歪めました。
「邪魔よ!汚らわしい乞食め!私の前で、そんなみじめな姿を見せないで!」
スジャータは、そう言って老人に唾を吐きかけ、そのまま通り過ぎていきました。老人は、その場にうずくまり、静かに涙を流しました。
スジャータの強欲は、止まることを知りませんでした。彼女は、遂には、街の食料庫を買い占め、それを高値で売りつけるようになりました。人々は、飢えに苦しみ、スジャータの元へ泣きついてきましたが、彼女は聞く耳を持ちませんでした。
「金が全てよ!飢え死にしようが、私には関係ないわ!」
彼女の心は、氷のように冷え切っていました。
やがて、スジャータの悪行は、都の王の耳にまで届きました。王は、スジャータの強欲と残虐さに激怒し、彼女を呼びつけました。
「スジャータよ、お前は、人の道に外れた行いをしている。その強欲は、この都を滅ぼすものだ。今すぐ、その行いを改めなさい!」
王は、厳しくスジャータを叱責しました。しかし、スジャータは、王の言葉にも耳を貸さず、傲慢な態度を崩しませんでした。
「私に指図するつもり?私は、この都で一番の富豪なのよ!王様だって、私には逆らえないわ!」
スジャータは、そう言って嘲笑しました。王は、彼女の無知と傲慢に、もはや言葉を失いました。
その夜、スジャータは、いつものように豪奢な宴を開いていました。しかし、その宴の最中、恐ろしい出来事が起こります。空は突如として暗闇に包まれ、地響きが大地を揺るがしました。家は傾き、財宝は床に散乱しました。スジャータは、恐怖に顔を青ざめさせ、逃げ惑いました。しかし、彼女がどこへ逃げようとも、運命の鉄槌は、彼女を容赦なく打ち据えたのです。
地中から、巨大な蛇が現れました。その蛇は、スジャータの財宝を食い荒らし、彼女の家を跡形もなく破壊しました。スジャータは、必死に蛇から逃れようとしましたが、その巨体に飲み込まれてしまいました。彼女の断末魔の叫びは、夜空に虚しく響き渡りました。
スジャータが死んだ後、彼女の財産は、全て無に帰しました。かつて彼女が築き上げた富は、一夜にして消え去り、残されたのは、荒れ果てた土地と、人々の嘆きだけでした。アリンダが遺した財産は、彼の妻の強欲によって、無慈悲に失われたのです。
この話は、強欲がいかに愚かで、破滅的な結果をもたらすかを、私たちに教えてくれます。スジャータのように、自分の欲望ばかりを追い求め、他者を顧みない心は、最終的には自分自身を滅ぼすのです。アリンダの遺言のように、財産は、他者のために使うことで、真の価値を見出すことができるのです。この世の富は、いつか失われるものですが、慈悲の心は、永遠に輝き続けるのです。
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